インタビュー【東濃信用金庫 専任役 横山幸子 さん】 

東濃信用金庫 横山幸子さん

今回お話を伺った方

東濃信用金庫 人事部 人材開発課 専任役 横山幸子 さん

東濃信用金庫にて人材開発部の専任役という管理職として活躍されている横山幸子さんに、ご自身のキャリアライフと女性リーダーへの想いについてお話を伺いました。

 

御庫の概要を教えてください

東濃信用金庫は、地域の皆さまから“とうしん”という愛称で親しまれています。
“とうしん”は、地域の皆さまとの「ふれあい」を大切にする「Face to Face」営業を基本とし、永年にわたり築き上げてきた「信用」のもと、地域社会の発展のために活動しています。

平成28年9月30日現在、店舗数59店舗。

岐阜県と愛知県を主な営業エリアとしています。

 

ー幸せなことに、背中を押してくれて、相談相手にもなってくれる

イクボスの存在があったことは、とても心強かったですー

 

●Career Story Of Her

 

子育てとの両立は大変でしたが、責任感を持って仕事をやってきました。

短大卒業後、平成元年に入庫。今年で28年目となりました(育児休暇を3年取得しているので、勤続年数としては25年目)。

平成6年に第一子を出産。

私の母は働いており、自分も働きながら子育てをすることが当たり前と思っていたので、出産に当たり産休育休取得を申し出たのですが、その頃は産休育休取得がまだ少なく、周りからは「子供がかわいそう」とか「お母さんになるのに何を考えている」など、心無い言葉を言われました。

 

でも、その当時の支店長が「いいじゃないか。がんばれ。」と後押ししてくれたので、乗り越えられました。

子供が3人おり、3回の育休をいただきました。年がそれぞれ5歳ずつ離れているので、5年置きの育休取得でしたが、育休を取得する度に公的制度が少しずつ良くなってきたのを実感しました。また、最初の子どもの育休を取得した時とは違い、3人目の子どもの育休を取得した時は、働きながら子育てをする職員も増え、社会の環境や金庫の環境が大きく変わったことを実体験しました。その経験が今に生きていると感じています。

上の子から下の子まで、15年間休みなく保育園に通わせ、小学校には16年間通いました。参観日や交通当番、自治会やスポーツ少年団の役員などを務め、育児と仕事の両立は本当に大変でした。

公私共に休みがほとんど無い状態でした。

今年、一番上の子どもが就職して、一番下の子どもが中学に入学したので、やっと少しですが時間に余裕ができてきたところです。

入庫から平成21年9月までは異動がありながらも支店勤務をしていまして、昇格試験を受けて女性職員を束ねる代理という役職に就きました(現在は人事制度が変わったため、この役職はありません)。

平成21年10月に本部に異動し、研修担当となりました。

本部に異動してすぐ、上司に「これからは女性も上を目指すべきだ。女性が育児と両立して働き続ける中で、誰かがパイオニアとして扉を開けないといけない。その扉を開けるのは、君のように当たり前に子育てしながら仕事を続けている人がなるべきだよ。君が適任だ。」と何度も言われました。

最初は「私なんかダメです。」と断っていましたが、結局背中を押される形で昇格試験に挑戦し補佐役になり、その後管理職の昇格試験を受け今年の4月から専任役になりました。

現在は、研修担当であると共に、女性の働きやすい職場環境整備の取り組みである「カンガルーポケットの会」と、女性職員のパワーと感性でとうしんファンを増やす活動である「チームなでしこ」の主導、運営も担っています。

 

-どのような思いで育児と仕事の両立に臨んできましたか?

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育児をしながら働いているからこそ、「仕事は責任を持って行い、そして効率良く」を心がけてきました。なるべく定時に終わるようにやり方を工夫してきましたね。

家庭の方は、夫は仕事が忙しく、実家の母の手もそれほど借りることができなかったので、電化製品に助けられながら(笑)、ほとんど一人でやってきました。

仕事と家庭の両立で忙しいと言っても、子どもがやりたいことを、自分の忙しさを理由にやらせてあげられないとは言いたくなかったので、送り迎えや役員など仕事との両立で私も大変になることはわかっていましたが、3人ともやりたいと言ったスポーツ少年団に入れました。

子供が一番大切です。子供がやりたいことはやらせたいと強く思っていたからです。

そんな忙しい思いをしてでも、仕事が楽しかったので続けてこられたなと思います。

 

ただ一度だけ、辞めようと思ったことがあります。そのことを夫に話したところ、「今までがんばってきたんだから、もう、いいやないか。」とねぎらってくれました。

ところが、その頃高校生だった一番上の子どもから「働いているお母さんが好きだから辞めないで。もっと手伝うから。」と言われたのです。そんなふうに思っていてくれていたのだと、とても嬉しかったのですが、仕事を続ける意義を見いだせなくて、気持ちは辞める方向に傾いていました。

結局、その時は自分がやるべきことが見つかって、辞めずに続け、今に至っています。

先日その一番上の子どもから「就職して実感したけれど、25年も働き続けている両親を本当に尊敬している。ありがとう。」と感謝の言葉をもらいましたので、大変なこともあったけれども、働き続けてきて良かったなと思っています。

 

―社員への支援制度にはどんなものがありますか?

育児休業者がスムーズに職場復帰できる支援として、「カンガルーポケットの会」があります。

平成28年9月30日現在の総職員数1,108名(パート含む)のうち、女性は547名。女性既婚者数は182名です。

平成27年度には、出産者全員が育児休暇を取得し、100%復帰しています。

職員の事情に配慮して時短制度やフレックス制度がありますが、復帰後彼女たちはそれらを利用して仕事を続けています。今では、復帰した人が辞めることは、まずありません。

 

「カンガルーポケットの会」出産を控えた職員が先輩職員と交流

「カンガルーポケットの会」
出産を控えた職員が先輩職員と交流

平成22年4月に、他社がやっている取り組みを参考にして、女性職員を支援する活動である「カンガルーポケットの会」を人事部長に直談判し立ち上げました。

この会では、育児休業者、妊婦(育児休業取得予定者)、復帰した職員を対象に、現在2ヶ月に一度開催して、女性が働きやすい職場環境の整備に取り組んでいます。

カンガルーポケットの会の目標は以下の3つです。

1.子育てをしながら働き続けることができる環境の整備

2.女性自身のキャリア意識(職業人として働けることへの喜び)を育てる

3.育児をする女性職員が職場に認めてもらうための心構えと行動を身につける

 

「カンガルーポケットの会」 オペレーション練習をする育休者

「カンガルーポケットの会」
オペレーション練習をする育休者

この会の活動は、「育休者のモチベーションを高く持ち続ける」「専門知識を身に付ける」「スムーズな現場復帰」など、大きな効果をだしています。

その他、通信講座や研修への取り組みを促すなど、キャリアを閉ざすことなく仕事を続けてもらうための活動も行っています。

子供同伴で参加できるので、ほとんど子供連れで参加されます。育児休業者同士の情報交換や、復帰後の仕事への心構えを伝えるなど不安の軽減をはじめ、復帰直後のストレスを抱えやすい職員への対策も含めた取り組みをしています。

 

この会で後輩達に、「あなたの働き次第で周りからの協力を得られるんだよ。」

「皆が育休を取っている間、残った職員みんなが戻ってくる場所を守ってくれているんだから、育休を取ったならば復帰してね。」

「子育て中はプライベートもオープンにしようね。子供の行事のことなども普段から話していれば、周りの人も一緒に子育てしている気持ちになって助けてくれるよ。理由も言わずに黙って休んでいてはそういう気持ちも生まれないよ。」

「あなたが休むことで周りがフォローをするわけだから、感謝の気持ちを持ってね。」と伝えています。

私自身、仕事が忙しくて休めない時には、支店長に相談して支店の2階の空いている部屋に熱を出した子供を寝せながら仕事をしたこともあります。そういう働き方を強要するつもりはありませんが、こういう経験がある自分だからこそ、このような耳の痛いことも話せるのかなと思っています。

カンガルーポケットの会は今7年目になりましたが、このような取り組みを続けることが大切だと思って活動しています。

 

-周りの人の協力は?

上を目指すように背中を押してくれた上司がとても大きな力になっています。

私と不思議な縁があり、今の部署で三度も一緒に仕事をしていることになります。私にとって、いわゆるイクボス的な存在です。また、「チームなでしこ」のメンバーの協力も大きな支えになっています。

女性で管理職になりたいと自ら言う人はほとんどいません。

女性管理職を増やしたいと考えるなら、管理職にしたい、ふさわしいなと思った女性に助言をし、道を指し示して育てていく存在が必要だと思います。また、管理職を目指す女性を孤立させてしまわないような環境作りも大切ですね。

私には運良く、道を指し示して育てていただいた上司に恵まれ、「チームなでしこ」という仲間に支えられてチャレンジしてこられたと思っています。私を育ててくれた上司は、来年定年退職されてしまいます。不安ではありますが、私も管理職として次のステップアップの機会かなと前向きに捉えています。

今後は、私自身が後輩の女性達のイクボスになれるような働き方をしなければと感じています。それと共に私の後継者を育てることも今後の課題です。

当金庫には、二人、三人の子どもを育てながら働く女性職員も多いので、今でもかなり働きやすい環境ではあると思いますが、今後ますます女性が生き生きと、働きやすい職場環境を作るのに力を注いでいきたいというのが今の私の想いですね。

そして管理職を育てるためには、イクボス制度を組織の仕組みとして導入したいなと考えています。

 

女性に大きなプロジェクトを任せるには「強力なリーダーの存在と女性に自由にやらせること」。 

-日本の女性リーダーに必要なスキルとは?

キャリア教育を受けずにポンと役職に引き上げられても、その女性はつぶれてしまいます。

先ほどのイクボス制度のような、仕事の面と精神的な面を支えてくれて、ある程度時間をかけて育てる仕組みがいると思います。

男性には見本となるような上司が周りにいるので、その方を目指せば良く、キャリアアップを前提とした研修を受けていますし、人事システムがそうなっています。

一方女性でキャリアップを目指そうとしても見本となる上司がいなかったり、キャリアアップを前提とした研修も受けていない場合が多いです。

そのため、イクボスが道を示したり、背中を押してくれたりすることで、キャリアを積んでいけると考えます。

女性リーダーになる為の必要な要素は、仕事ができることはもちろんですが、人に対して愛情があることと、その愛情を女性らしく伝えることができることだと考えます。

相手が気持ちよく仕事ができるような話し方ができて、状況を汲み取ることができることは、女性が得意とする分野であり、女性リーダーとして必要な資質だと思います。

私が担当している活動で、「チームなでしこと」いう‘とうしんファン’を作る女性プロジェクトチームを立ち上げてから3年になりました。

「チームなでしこ」は、理事長発信で始めたプロジェクトチームです。理事長が自由にやっていいよと言っていただけたからこそ全支店を巻き込んでできると思っています。

各支店がバラバラで行っていた店頭ディスプレイを調査して他の支店の参考になるようにアルバムを作成。支店に勤務する女性職員に向けて座談会を開催し、各支店での好事例の共有化を図るなど、女性ならではのきめ細やかな視点で、‘とうしんファン’を増やすことを目標に活動しています。

平成27年5月に金庫と地域の人材育成のためにオープンした「とうしん学びの丘“エール”」にて、地域活性化と職員満足度向上のために、「チームなでしこ」主催で、平成28年11日23日(水)勤労感謝の日に、『とうしんエール感謝祭』を開催しました。

開催にあたっては、地域で既に行っているイベントの主催者に一緒に開催することをお願いに行ったり、熊本への義援金を募るために、チャリティーバザー用の品物を本部・営業店から集めたりもしました。またボランティア参加への要請を行いました。準備に一年ぐらいかかりましたが、約1,000人のご来場者があり、盛況のうちに終わることができました。

このように女性が何か大きなことをやる時には、「女性の活動を承認する強力なリーダーがいることと、女性に自由にやらせること」が成功の秘訣です。

女性リーダーの育成は、このような環境も必要ではないかと実感しています。自由に動けるから、アイディアを実行に移せます。その結果、今までできなかったような新しい発見や力が出てきて、大きなことを成し遂げる原動力になると思いますね。

 

 

横山 幸子さんのライフスタイル

毎朝出かけるまでにしていること

毎日5時半に起床して、お弁当作り。子供たちの送り出し。

8時頃出社します。

帰宅後の習慣

家事をして、だいたい23時に就寝。(早い時には21時頃に寝てしまいます)

土日も研修や会議があって出掛けることが多く、好きなガーデニングが中々できないことが悩みですね。

 

 

■企業情報(平成28年9月30日現在)

名称/東濃信用金庫

設立/昭和54年4月1日

店舗数/59店舗

預金残高/1,061,108百万円(譲渡性預金含む)

URL http://www.shinkin.co.jp/tono/toshin/gaiyo/index.html

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